喜べない小次郎の帰宅

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それから一週間後の4月7日、奥様から電話があり、
4月9日に小次郎を家に連れて来てくださることに
なりました。

マメタはとても沈んでいました。あんなに可愛がっていた
小次郎が帰って来ると言うのに喜ばないのです。

部屋に閉じこもっていたマメタの所に行き声をかけ
ました。マメタはこの前小次郎が帰って来たときの
辛い出来事が蘇り、また同じことが起こるのではないかと
不安でいっぱいだと言いました。

私もその気持ちは充分過ぎるくらい分かりました。
だから自分が強くなり、肝っ玉母ちゃんになる!
そしてこの前、訓練所で指導してもらった吊り上げを
何としても成功させて、小次郎との上下関係を確立
させるから、一緒に頑張ろうとマメタを励ましました。

諦めないで頑張ろう。私は絶対に諦めないよと
話しをしましたが、それは私自身の不安な思いを
何とかかき消そうとした言葉だったように思います。

4月9日月曜日の夕方でした。今回はトレーナーさんが
体調不良のため、娘さんが来てくださいました。
そのスケジュールに合わせ、部活を休んで帰って
来たマメタがお散歩や歩行の指導を受けました。

そして翌朝、学校に行く前の時間を使って、もう一度
マメタが歩行の指導を受けましたが、マメタは元気がなく
娘さんの指導も聞いているのかいないのか…そんな様子に
見えました。学校に行く時間になったため、途中から私や
主人も指導をしていただき、娘さんは朝の9時頃に帰って
行かれました。

娘さんもトレーナー業を継いでみえるだけあって、
見事に小次郎をコントロールしてみえました。
それでもやはり自分たちだけで関わるようになると
トレーナーさんが言われるように簡単に小次郎を
コントロールすることは出来ませんでした。

お散歩のときに常にリードショックをかけるタイミングを
見計らう…私たち家族にとって、それは物凄く負担で
ストレスを感じることでした。私たち同様、小次郎も大きな
ストレスを感じていることは素人の私にも分かりました。

一週間後、スカイプで小次郎の様子を見ていただいて
いたときのことです。その日の朝、お散歩に行こうとして
外に出たところ、小次郎が胃液のようなものを少し吐き
ました。私は、自分たちがトレーナーさんの指導通りに
出来ないために小次郎にストレスをかけてしまっている
のだと思う。小次郎に申し訳なく思う、可哀想なことを
してしまっている…という主旨の話をしました。

その時にトレーナーさんから言われた言葉…「あー、
心配しなくても大丈夫ですよ。小次郎の方があなたたちに
予防線を張っています。ストレスを感じないようにちゃんと
予防線を張っていますから。今、脚で首のところを掻きまし
たね。それは小次郎が『あ~あ、やってらんないよ』と言って
いるんです。うちに居るときには、そんなことは一度もやった
ことがないですからね。ちゃんと予防線を張っているというこ
とですよ。心配要りません」

とてもショックでした。傷つきました。私たちは小次郎と
家族として暮らしていきたかっただけです。甘噛みが余りにも
酷くて触ることすら出来ないほどだった小次郎に不安を感じ、
トレーナーさんから小次郎は物凄く性質の悪い犬である、
怖ろしい犬である、このまま素人が育てたら保健所に行くこと
間違いないと言われ、この仔を保健所には行かせたくない、
家族として幸せに暮らしたい…ただそれだけの想いで預託を
したのです。

なのに家族になるどころか小次郎が私たちに予防線を張って
いる。私たちが不甲斐ないからこんな事になっている。私たちは
どれだけ小次郎を苦しめることになるのだろう。私たちじゃなくて、
トレーナーさんの指導通りに出来る飼い主ならば、小次郎は
幸せに暮らしていけるのに、私たちの元に来たばっかりに小次郎は
苦しく辛い毎日を送っている、不幸になってしまうかもしれない。
こんな小さな身体に、大きなストレスを抱えさせていること、
飼い主を選べない小次郎に「ごめんね。ごめんね」と謝ることしか
出来ない情けない私…もうどうすれば良いのか分からなくなって
きていました。

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母ちゃんもマメタ姉ちゃんも泣かないでよ。 おいら、母ちゃん達と幸せに暮らしたいから、
犬として幸せに暮らしたいから、それを分かって欲しいと思ってるんだU^ェ^U ワン!
あと15年生きたいからさ(゜∇゜ ;)エッ!? 〇田流は間違ってると思うんだ!!

2度目の訓練所訪問

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トレーナーさんからは何の連絡もなく、私は指導通りに
出来ず、小次郎を崩してしまったことを怒ってみえるの
だろうと思っていました。

6日程経ったときに、娘さんからメールがあり、崩れて
しまった小次郎の矯正が進んでいること、人工芝で爪を
剥がしてしまったこと、小次郎は癖があるけれど、その
癖を理解すれば躾はそれ程難しくないこと、元気にしている
ことなどが書かれていました。

小次郎が訓練所に戻ってから10日ほど経った3月末に
奥様から電話があり、練習のために訓練所まで来るように
とのことでした。崩れてしまった小次郎はちゃんと
矯正したからと。

1月の訓練所訪問から3ヶ月弱。あんなに期待に胸膨らませ
幸せな気持ちでいたのに、僅かの間にこんなにも苦しくて辛い
状況になってしまったことが信じられませんでした。

特別なことを望んでいた訳ではなかった…甘噛みが酷くて
触ることすら出来なかった小次郎、500頭か1000頭に1頭
いるかいないかの怖ろしい柴犬小次郎、例えそんな怖ろしい
犬だったとしても、家族として迎え入れた以上、手放さずに
幸せに暮らしていきたい…ただそれだけだったのに。どうして
こんな事になったのか。そんな気持ちを抱きながら訓練所へと
車を走らせました。

家族全員で訪問しました。小次郎は私たちを見ると喜びました。
主人が「よしよし」と少しテンション高く声をかけたところ、
「そんな興奮させるような声の掛け方はダメです!」と
トレーナーさんが声を荒げました。

私たちの姿を見て興奮して尻尾を振り、飛びつく小次郎を見て
トレーナーさんは「興奮してるな。これではダメだ」と言うと同時に
小次郎を吊り上げて小さい円を描くように回しました。

回されて足が地面に着かない状態で吊り上げられていた
小次郎はギャンギャン吠えていましたが直ぐに静かになり、
急にテンションが下がりました。

「やっぱりこれが一番手っ取り早い」とトレーナーさんが言われました。
その後部屋に入れていただきました。トレーナーさんが居ると
“心理が変わるから”(小次郎がいい仔になるから)という事で
奥様だけが部屋に残り、私たち家族に吊り上げの指導をして
くださる事になりました。

誰がしますかと言われ、私が手を挙げました。

吊り上げてゆっくり下ろし、その後左手を顎の下に添えて右手で
よしよしと優しく声をかけながら目から頭にかけてそっと撫でる。
数歩下がって磁石のように付いてくる小次郎にまた同じことをする。

小次郎は怯えているような諦めているような、そんな表情でした。
最初にトレーナーさんに吊り上げられたときはギャンギャン鳴いて
抵抗していましたが、私が吊り上げたときは鳴くことさえしませんでした。

ソファーに座って背もたれにもたれ、足と腕を組み、「はい、ゆっくり
下ろして。そう、顎に手を当てて。そっと撫でて。はい、そのまま2・3歩
下がって、そうそう付いてくるでしょう。もう一度顎に手を当てて、
撫でて」と言われる奥様は、最初に会ったときの謙虚で物静かで
優しい雰囲気の奥様とはまるで別人のようでした。

次は誰がしますかと言われ、長女が手を挙げました。
主人もマメタもマスオさんも、手を挙げることはしませんでした。

今思えば、その時の光景は異常なものであったと思います。
大の大人が小さな犬を吊り上げる指導を受ける。
それをしなければならないと思って、怯えて抵抗さえ出来
ない小次郎を吊り上げる…なんて酷いことを…思い出すのも
苦しくて辛い出来事です。自分で自分が許せない…そんな
気持ちになってしまうのです。

その後歩行練習をしました。その時も駄目だしのオンパレードで、
私たちのすることなすことが気に食わないような感じがしました。
折角矯正した小次郎を10日余りで崩してしまった私たちに対する
憤りの気持ちからなのか、いつもいつも指導通りに出来なくて、
トレーナーさんの意図を理解出来ない私たちへの腹立たしさから
なのか…恐らくどちらの気持ちもあったのだとは思いますが、
もしかしたら小次郎の矯正が上手くいかなかったときに、責任は
総て飼い主にあるという意識付けをするための布石だったの
かもしれません。

それでも何とかOKを貰い、これで何とかなると少し安堵した
ことを覚えています。

前回の訓練所訪問とは全く違う気持ちではありましたが、
行きよりは少し軽い気持ちで帰路につくことが出来ました。

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おいら、母ちゃん達に会えて嬉しかったんだ…それで尻尾振ったらダメなのか?
飛びついたらダメなのか? 母ちゃん達だって嬉しかったら身体全体で
表すだろ? 何でそんなことで吊り上げられなきゃならないのか分からないよ(≡д≡)

小次郎がいなくなって…。

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小次郎が居ない生活は寂しいという気持ちと、ホッと
する気持ちが入り混じっていました。

いつもいつも小次郎を監視するようなお散歩。小次郎が
少しでも前に出たらリードショックをかけなければと思う
けれど、それが嫌で嫌で仕方がなくて、ちっとも楽しく
ないお散歩。立ち止まることもなく、延々と真っ直ぐに
歩いていくだけのお散歩。

それは小次郎も同じで、いつリードショックをかけられる
かと常にピリピリ神経を尖らせ、私がつまづいたりして
少し歩調が変わるだけでビクッと私から遠ざかろうとし
たり興奮したり……。排泄のための匂い嗅ぎを少し
したら後は歩くだけなので、歩きながらウンチをして
しまうことも度々ありました。ウンチをしたいから、自分
が排泄したい場所を探してするのではなく、我慢に我慢
を重ねて、歩きながらウンチをしてしまうのです。

そんな事すら分からずに、小次郎を理解してあげら
れなかった私。犬としての欲求や犬としての尊厳を
無視し続けていた私。情けなくて自分に腹が立ちます。

首輪を抜いて逃げたこともありました。当然だと思い
ました。小次郎だってリードショックなんてかけられ
たくないはずです。トレーナーさんは犬の首のところは
殆ど神経が通ってない。だから親犬は子犬の首の
ところを咥えて運ぶのです。リードショックをかけても
犬にとっては痛くも痒くもありませんと言われましたが
本当にそうなのでしょうか。

痛くも痒くもないのなら、何故小次郎はあんなに
リードショックをかけられることを嫌がったのでしょうか。
怯えていたのでしょうか。少しずつ○田流への不信感が
膨らんでいましたが、もう引き返せないという気持ちの
方が強く、またトレーナーさんからも、リードショックを
かけるタイミングが遅すぎるからダメなのだ、ちゃんと
DVDを見て練習するようにと言っておいたのに、何も
練習していないし理解していないことが原因だと言われ
ていたため、私が指導通りに出来ないことが一番問題
なのだという気持ちが強かったように思います。

練習はしていました。ぬいぐるみに首輪とリードをつけて
DVDを見ながら何度も練習しましたが、実際の小次郎は
DVDの犬とは違う動きや反応をするので、同じようには
出来ないのです。またぬいぐるみになら躊躇せずにリード
ショックをかけることが出来ましたが、小次郎にリード
ショックをかけることはなかなか出来ませんでした。

期待に胸を膨らませ、とても楽しみにしていた小次郎
との生活。なのに、小次郎とは家族になるどころか
どんどん距離が広がっていくような、小次郎が私たち
に対して心を閉ざしていくような、そんな毎日でした。

こんなことをしていたらダメだ。トレーナーさんが言わ
れるように、早く吊り上げを成功させなければ、とん
でもないことになってしまう。でも…出来ない。いつも
心の中に相反する思いがありました。

仕事をしていても、小次郎のことで頭がいっぱい
でした。なのに家に帰るのが嫌で堪りませんでした。

あんなに可愛くて愛おしいと思っていた小次郎の
ことを“怖い”と思うようになってきていました。

だから小次郎が訓練所に戻り、その恐怖心や
苦しいお散歩から解放されて、ホッとした自分が
いたのでした。

そして少し食事が喉を通るようになりました。

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ねえ母ちゃん、匂い嗅ぎをしてるおいらの顔や、おねだりしてるときのおいらの顔Uo-ェ-oU ポッ♪
よーく見てよ(*´ -`)(´- `*)おいらとってもシアワセな顔してるだろ(^.^)

また訓練所へ

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小次郎が帰って来て僅かの日にちでしたが辛い毎日でした。
そして9日目の日曜日の夜のことでした。

その頃には、お散歩中にリードショックをかけなければなら
ないことが負担で、なるべく人や犬に会わない時間帯にお散歩を
するようになっていました。

それでもなるべく夕方にはと思ってはいたのですが、気持ちがすすまず
夜のお散歩になることが多く、そんな中での出来事でした。

風が強く、暗い夜道で落ち葉が道に舞う様子に小次郎は突然興奮しだしました。
あちこちに舞い散る落ち葉を獲物を狩るかのように追いかけ出したのです。

その興奮から箍が外れたようになった小次郎は、肩を
いからせて狂ったように匂い嗅ぎをし、ゲホゲホ言うほどの
引っ張りで歩き出しました。何とか私たちの横を歩いていた
さっきまでの小次郎とは別の犬ではないかと思うような変わり
ようでした。

今まで抑えていたものが一気に噴き出したのでしょう。
矯正したのではなく、ただ単に抑え込んでいただけだった
のだと思います。

人でもずっと我慢に我慢を重ねていれば、何かをきっかけに
爆発するのと同じだったのでしょう。抑え込む、過度な我慢を
させる…ずっとその状況が続けば、それが当たり前のことの
ようになってしまう、テレビで報道されているように、軟禁され、
いつでも逃げ出せる状況にあっても逃げ出さずに、その状況を
受け入れてしまっている人のように感覚が麻痺していくのだと
思いますが、小次郎には抵抗する気持ちが残っていたのです。

それなのに私にはその事が理解できませんでした。
とんでもないことになってしまったと思ったのです。

余りにもショックで、散歩を続けることが出来ず、そのまま
家に戻ってトレーナーさんの所に電話をかけました。
「せっかく矯正していただいて、穏やかな犬になって帰って
来たのに、私がダメにしてしまいました。もう一度、そちらに
連れて行きたいのですが、いいでしょうか」と奥様にお話しし、
トレーナーさんと相談していただきたいとお願いしました。

翌日、主人と私は休みを取って、小次郎をトレーナーさんの
所に連れて行く算段をしましたが、奥様から電話があり、娘さんが
小次郎を迎えに来てくださることになりました。

遠い道のりを娘さんは一人で運転し、小次郎を迎えに来て
くださいました。娘さんの顔を見るなり尻尾を振り、おしっこを
娘さんにかけるようにしてしまった小次郎。トレーナー業を
継いでみえる娘さんはつかさず「今のおしっこの仕方は支配性
が現れていましたね」とおっしゃいました。

今、犬のボディランゲージを少し勉強するようになり、
その時の小次郎のおしっこは、娘さんに対して「怒らないで」
「落ち着いて」というシグナルだったのではないかと思います。

小次郎は娘さんの軽自動車の助手席に座り、また訓練所に
戻りました。助手席にはバリケンも何もなく、遠い道のりを
行くのに大丈夫だろうかと少し心配でしたが、翌朝、私が
送ったお詫びのメールへの返信で娘さんと小次郎が無事に
訓練所に着いたことを知り、胸を撫で下ろしました。

そしてまた、小次郎の居ない生活が始まりました。

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母ちゃん、おいらの気持ちに気づいてよ! もっとおいらのこと分かってよ!
おいらは犬だよ。葉っぱぐらい追いかけるよ♪(* ̄  ̄)b “(--;)ウン・・・
おいら、自信のない、自分で何も考えられない犬にはなりたくないんだ!(・。・)b 「そうだ!そうだ!」